僕は君を殺せない
2015.12.22. / 株式会社集英社
「おれ」はある夏、クラスメートの代わりに参加したミステリーツアーで恐ろしい体験をする。
「僕」の周りでは最近不幸が続いている。
…二人の少年の言葉で紡がれる物語は、意外なところで繋がって行く。
全てが明らかになった時、そこにはなんともおぞましい事実があった。
これは、本当に不思議な感覚で読み進めて行きました。
二人の少年の告白で紡がれて行って、それぞれが別の話かと思ったら、まさかそこで接点があるとは…という感じで。
また、この中で実行されている殺人事件が恐ろしい。
まさに猟奇的で、それなのになんだか寂しさが感じられて。
色々な事実が明らかになって行く中で、最初は恐ろしいばかりだったものに切なさが混じって来て。
人生、どこでどうなるか分からないんですね。
「Aさん」「春の遺書」という短編もそれぞれ怖かったり、切なかったりで。
本作は、著者が「亡霊」で2015年度ノベル大賞、準大賞受賞した作品を改題したデビュー作なんですけれど、衝撃的なデビュー作って感じでした。
読み終わった後に表紙を見ると、また切なさが増幅されました。
凄いなぁ。
いっそ薄情になりきれない人間の愚かさというやつです。客観的に考えれば正しい選択を誤らないはずが、感情という化け物が邪魔をして、混乱させるのです。
欲しいものを手に入れることが、人生のうちで一度くらいあっても、いいでしょう。
無条件で信じられる。会えてよかった。そんな存在がいることが、これほど有り難いとは思いませんでした。
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2016.08.03(Wed) | 【は行】:長谷川 夕 | cm(0) | tb(0) | ▲